最近では、共働き家庭の増加や企業の国際化が進む中で、単身赴任を選ぶ家庭が増えています。
単身赴任は、キャリアアップのチャンスとして捉えられることが多い一方で、家族との時間が減ることや、精神的なストレス、経済的な負担など、さまざまな課題を抱えることになります。
中には「単身赴任はデメリットばかりだ」と感じている方も多いでしょう。これから単身赴任を控えている方や、現在すでにその状況にいる方が、不安を抱くのも無理はありません。
この記事では、「単身赴任はデメリットしかない」と言われる理由について詳しく解説し、その一方で、多くのメリットも存在することを紹介していきます。ぜひ、参考にしてください。
「単身赴任はデメリットしかない」と言われる理由
単身赴任は、仕事の都合で家族と離れて生活せざるを得ない状況を引き起こします。
一見華やかに見えるかもしれませんが、実際には「デメリットしかない」と感じる人が多いのが実情です。
ここでは、単身赴任に伴うデメリットを紹介し、なぜ「デメリットしかない」と言われるのか、その理由を探っていきます。
家族との時間が少なくなる
単身赴任をすることで、物理的に家族と離れて生活することになります。
その結果、家族と一緒に過ごす時間は必然的に減少し、これが家族の絆を弱める要因になりかねません。そうした状況は、寂しさやストレスを感じる原因ともなります。
たとえ週末に帰省できても、移動にかかる時間や費用のため、家族とゆっくり過ごせる時間は限られています。
ビデオ通話で顔を見ながら話すことは可能ですが、実際に近くにいないことによる寂しさはなかなか解消されません。
子どものイベントに参加できないことがある
子どもの運動会や発表会など、一生に一度の大切な瞬間を、単身赴任のためにそばで見守ることができない。
多くの単身赴任者が抱える、この切ない思いは、言葉にできないほどの大きな苦しみです。
写真や動画を通して子どもの成長を感じようとしても、直接その場に立ち会って、我が子の笑顔や頑張る姿を間近で見たいという気持ちは、なかなか満たされません。
親の不在が、子どもの記憶の中に大きな空白を作り出すことで、親子関係に悪影響を及ぼす可能性も懸念されます。
場合によっては、「パパ見知り」になり、父親としての存在感が薄れてしまうケースも見受けられます。
生活費が二重に発生する
単身赴任は経済的にも大きな負担を伴います。
会社から手当が支給される場合でも、赴任先と自宅の二重生活により、出費は大幅に増えるのが一般的です。
具体的には、家賃や光熱費、食費に加えて、赴任先での家具や家電の購入費用もかかります。さらに、帰省時の交通費や現地での交際費も無視できない負担です。
多くの場合、手当ではこれらのすべての費用を賄えないため、単身赴任者は家計の見直しや節約を余儀なくされることが少なくありません。
食生活が乱れがちになる
仕事の疲れから自炊が面倒に感じ、ついコンビニ弁当や外食に頼りがちです。
単身赴任の一人暮らしでは、食材を無駄なく使い切るのが難しく、栄養バランスが偏ることも少なくありません。
例えば、キャベツを1個買って使い切れなかったり、手軽な加工食品に頼ることもよくあります。
こうした不規則な食生活は、健康に悪影響を及ぼすリスクがあります。
子育てを奥さんに任せっぱなしになる
単身赴任中、奥さんが家事や育児を一手に引き受ける「ワンオペ」になりがちです。
これは心身ともに大きな負担となり、疲労やストレスが積み重なることで、奥さんの健康やメンタルにも悪影響を与えることがあります。
その結果、夫婦間のコミュニケーションが減少し、次第にお互いの状況や気持ちを理解し合えなくなることも少なくありません。
また、旦那さんが子どもと過ごす時間が少なくなることで、奥さんが不満を感じるケースも。
家族全体の絆が弱まり、父親としての役割が十分に果たせないことに対する自己嫌悪や後悔の感情が、旦那さん側にも生じる可能性があります。
離婚のリスクが高まる
単身赴任によって夫婦に距離ができると、新鮮な気持ちが芽生え、仲が良くなったという声もありますが、逆に離婚に至るケースも少なくありません。
物理的な距離が原因で、夫婦間のコミュニケーションが減少し、すれ違いが積み重なることがよくあります。さらに、寂しさから浮気に走ってしまうケースもあり、これが大きなトラブルへと発展することもあります。
お互いの行動が見えにくくなることで、不信感が生まれやすくなることも、離婚のリスクを高める大きな要因の一つです。
家事を自分でこなさなければならない
これまで家事を奥さんに任せきりだった人にとっては、料理、洗濯、掃除など、日々の家事をすべて自分で行うことは、想像以上に大きな負担となります。
特に、一人暮らしでは、食材を無駄にせず使い切ったり、少ない洗濯物を効率よく片付けたりと、工夫が求められます。
仕事と家事を両立するのは決して簡単ではなく、時間の余裕がなくなることで、心身ともに疲弊してしまう人も少なくありません。
孤独感や寂しさを強く感じる
単身赴任者は、仕事から帰宅しても家族の姿はなく、静まり返った部屋で一人きり。
休日も誰と過ごす予定もなく、ただ時間を持て余す日々が続きます。
特に、誕生日や結婚記念日など、家族と一緒に祝いたい特別な日を一人で過ごすことは、心の奥深くからくる寂しさを突きつけられる瞬間です。
このような心情は、単身赴任者にとって非常に重い負担となり、日々の生活の中でその感情を乗り越えることが容易ではないことを実感させます。
新しい職場に馴染むのが難しいこともある
単身赴任による転勤は、新しい職場環境に適応するという大きな課題を引き起こします。
新しい職場で人間関係を築くことは、時間と労力を要するプロセスであり、スムーズに馴染めない人も少なくありません。
特に、内向的な性格の人やコミュニケーションが苦手な人にとっては、これが大きなストレス要因となることがあります。
新しい同僚との関係を築くためには、初対面の人々と積極的に接することが求められますが、そのためには自分の殻を破る勇気が必要です。このような状況を乗り越えるためには、焦らず少しずつ人間関係を築くことが重要です。
デメリットばかりではない!単身赴任のメリット
単身赴任は、寂しさや経済的な負担など、多くのデメリットを伴いますが、視点を変えればさまざまなメリットも存在するのが事実です。
ここでは、単身赴任のメリットについて詳しく紹介していきます。
一人の時間を存分に楽しめる
単身赴任は、自分だけの時間を心ゆくまで楽しめる貴重な機会です。
家族と暮らしているとなかなか難しい、自分のための時間をたっぷりと確保できるのは、単身赴任ならではの大きなメリットと言えるでしょう。
誰にも邪魔されることなく、好きなことに没頭したり、ただゆっくりと過ごしたりと、自由な時間を満喫できます。
例えば、読書好きであれば、静かな部屋で一日中本を読みふけったり、音楽好きであれば、お気に入りの音楽を大音量で楽しむことも可能です。
また、これまで時間が取れずにできなかった趣味を始めるチャンスでもあります。
料理や洗濯のスキルが上がる
これまで家事の経験がほとんどなかった人でも、単身赴任中は料理、洗濯、掃除など、すべての家事を自分で行わなければなりません。
毎日繰り返すうちに、自然と効率的な家事のやり方を覚え、料理のレパートリーも大幅に増えるでしょう。
特に、自炊をすることで、食材の選び方や栄養バランスなど、食に関する知識も深まります。
単身赴任中に培った家事スキルは、家族との生活に戻った際にも非常に役立ちます。自分が作った料理を家族に振る舞うことで、家族から感謝され、喜ばれること間違いなしです。
夫婦喧嘩が減ることもある
単身赴任は、夫婦関係に良い影響をもたらすことがあります。
毎日顔を合わせていると、些細なことで衝突してしまうこともありますが、物理的な距離が生まれることでお互いを客観的に見つめ直すことができ、冷静さを保つことが可能になります。
さらに、離れて暮らすことで、相手の大切さを改めて実感し、感謝の気持ちが深まることもあるでしょう。また、お互いのことをもっと知りたいという気持ちから、コミュニケーションの質が向上することも期待できます。
このように、単身赴任が夫婦の関係をより良くするきっかけになることもあります。
仕事に集中しやすい
単身赴任中は、仕事に専念できる環境が整うため、残業が増えて家に帰るのが遅くなったり、家で仕事を持ち帰ることがあっても、家族に迷惑をかける心配がありません。
休日に1日中仕事をしても、家族との時間を犠牲にすることがないため仕事に没頭できます。
このように仕事に集中できる環境があることで、業務を遂行したいという気持ちが高まり、スキルアップを目指そうという意欲が湧いてくる方も少なくありません。
普段忙しくて時間が取れない仕事の効率化や新しいプロジェクトへの挑戦など、単身赴任の間にこそ行いやすく、自分のキャリアをより一層磨く絶好のチャンスと感じる人も多いでしょう。
仕事に集中しやすい環境は、単身赴任の大きなメリットの一つと言えます。
家族の大切さを再認識できる
単身赴任で家族と離れて暮らすことによって、普段何気なく過ごしていた家族との時間の大切さを改めて実感するようになります。
特に、子どもたちの成長や、奥さんのサポートなど、家族の存在の大きさを実感するでしょう。
帰省した際には、以前にも増して家族との時間を大切にしようという気持ちが芽生えます。
久しぶりに顔を合わせることで、家族とのコミュニケーションの大切さを感じ、思い出を共有する時間が何よりの贅沢であることに気づくのです。
家族と過ごすひとときは、単身赴任中の孤独感を癒してくれる貴重な瞬間でもあります。
単身赴任手当が支給される
家族と離れて暮らす単身赴任者は、家賃や光熱費、食費などの生活費が二重に発生するため、経済的な負担が大きくなります。
このような負担を軽減するために、多くの企業は単身赴任手当を支給しています。手当の金額は企業の規模や業種、赴任先の地域によって異なります。
引越文化研究所の「転勤実態アンケート2023」によれば、単身赴任手当の平均額は、単身世帯で約9.3万円、家族世帯で約13.1万円です。
さらに、単身赴任手当に加えて、家賃補助や帰省旅費の支給、社宅の提供といったさまざまな支援制度が企業によって用意されています。
こうした支援があることで、単身赴任者は生活面での不安が軽減され、より業務に集中できるようになるでしょう。
昇進のチャンスが増える場合もある
単身赴任先で大きなプロジェクトを成功させたり、新しい市場を開拓したりすることで、会社への貢献度が認められ、昇進に繋がるケースは少なくありません。
また、異動によって異なる部署や部門の経験を積むことで、幅広いスキルを身につけることができ、将来のキャリアパスを広げることにもつながります。
これらの成長は、仕事だけでなく、人生全般において大きな財産となるでしょう。
赴任先の地域を観光する機会がある
休日には、赴任先の観光スポットを訪れ、地元の文化や歴史に触れる貴重な機会があります。
例えば、歴史ある寺社仏閣を参拝したり、自然豊かな公園を散策したり、地元のご当地グルメを味わったりするなど、さまざまな楽しみ方が可能です。
また、家族を招待して一緒に観光を楽しむことで、普段とは違う角度から家族との関係を築くことができます。
せっかくなら、単身赴任を楽しむことを考えよう!
「マイホームを購入したばかりなのに単身赴任が決まった…」「奥さんに申し訳ない…」など、単身赴任の生活に対して憂鬱な気持ちを抱えている方も多いかもしれません。
確かに、単身赴任は家族と離れて過ごす寂しさや、慣れない環境での生活など、大変なことが多いのも事実です。しかし、考え方や行動次第で、単身赴任は貴重な時間を過ごせるチャンスにもなり得ます。
単身赴任はマイナスイメージばかりではなく、実際に経験してみるとメリットもあるという声も多数存在します。
この機会を前向きに捉え、せっかくの単身赴任期間、思い詰めずに前向きに捉えてみましょう。
単身赴任の打診を受けたら、家族でじっくり話し合うことが大事
単身赴任は、本人だけでなく、家族にとっても生活が一変する大きな出来事です。
そのため、会社から単身赴任の打診を受けたら、家族全員でじっくり話し合い、それぞれの意見を出し合いながら、慎重に決断することが重要です。
■話し合うべきポイント
- 期間
単身赴任は、数か月から数年、場合によっては無期限となることもあります。期間の長さによって、家族の生活に与える影響は大きく変わってきます。 - 家計
単身赴任中は、家賃や光熱費、食費が二重にかかるため、経済的な負担が増えます。家族の収入や貯蓄状況を考慮しながら、生活設計を見直す必要があります。 - 家事・育児
残された家族は、家事や育児の負担が増加します。具体的に家事の分担や育児のサポート体制について話し合い、お互いの負担を軽減できるような工夫をすることが大切です。 - コミュニケーション
単身赴任中は、家族とのコミュニケーションが特に重要です。定期的に電話やビデオ通話を行い、お互いの近況を伝え合う時間を設けましょう。 - 帰省
経済状況や仕事の都合を考慮しつつ、帰省の頻度や時期を決定します。家族全員が満足できるように計画を立てておくことが大切です。 - 子供の成長
単身赴任は、子供の成長に影響を与える可能性があります。子供の年齢や性格に合わせて、親との関係性が変化する可能性も考慮し、適切な対応をしましょう。 - 夫婦の関係
単身赴任は、夫婦関係に変化をもたらす可能性があります。お互いの気持ちを素直に伝え合い、将来について話し合うことでより良い関係を築きましょう。
まとめ
単身赴任には、生活費の増加や家事の負担、家族とのコミュニケーション不足、子供の成長を見守れない寂しさなど、さまざまなデメリットが存在します。
しかし、赴任先で新しい経験を積んだり、趣味に没頭したり、スキルアップを図ったりすることで、単身赴任をポジティブに捉え、充実した時間を過ごすことが大切です。
この経験は、家族にとっても大きな転機となります。寂しさや不安を感じることがある一方で、新たな成長の機会や家族の絆を深めるチャンスとも言えます。
単身赴任が決まったり、すでに単身赴任中であるなら、家族のサポートに感謝しつつ、前向きな時間を過ごすことが大切です。
この機会を利用して、自分自身や家族との関係をより良いものにしていきましょう。
■子育てやメンタルケアに役立つ情報サイト・相談窓口
・子育て・教育の相談…政府広報オンライン「子育て・教育」
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・働く人のメンタルヘルス…厚生労働省「こころの耳」
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