単身赴任は、慣れない環境での生活や寂しさなど、さまざまな負担を伴うことが多く、時にはその状況に限界を感じてしまうこともあるでしょう。
単身赴任を続けることが困難だと感じている方は少なくありません。
いざという時に慌てないためにも、単身赴任が限界だと感じた際にどのような対処法があるのか、事前に知っておくことが大切です。
この記事では、単身赴任の限界を感じる年数や平均的な期間、また限界を感じた際の対処法について解説します。
単身赴任の平均期間
少し古いデータになりますが、独立行政法人 労働政策研究・研修機構「企業における転勤の実態に関するヒアリング調査」によると、単身赴任の期間は以下のようになっています。
- 3年以内:70%
- 3年超5年以内:20%
- 5年超:10%
他に単身赴任の平均期間に関する具体的な調査は見つかりませんでした。
また、同機関の「企業における転勤の実態に関する調査」によれば、転勤の期間、時期、年齢などの規定を「定めていない」と回答した企業は76.4%に上ることが報告されています。
単身赴任は何年まで耐えられる?限界は?【経験談】
単身赴任が何年まで耐えられるかは、個人の精神力や職場環境、上司の支援、会社の将来性、人生のライフプラン、家族の意見などによって異なります。
そのため、公的機関や民間機関による調査はほとんど行われていないようです。
筆者自身は5年ほど単身赴任を経験していますが、「もう限界だ!」や「この生活はやめたい!」と思ったことが何度もあります。そのように感じるのは、以下のようなときです。
- 孤独感や寂しさを強く感じるとき
- 自分の好きなタイミングで帰省できないとき
- 子どもや夫婦のイベントに参加できないとき
- 単身赴任がいつまで続くかが不透明なとき
これらの感情は、単身赴任を始めてすぐの頃、半年後、1年後、そして最近、特に強く感じています。
幸いにも、自分の好きなことを仕事にできているため、退職には至っていませんが、転勤を理由に退職する人の気持ちは非常によく理解できます。
次項で紹介していますが、「転勤を理由に退職を考えている」または「実際に退職した」という人は非常に多いです。
単身赴任にはデメリットもありますが、メリットもあるため、続けられる人にとっては良い選択かもしれません。
しかし、本当に限界を感じている人は、上司に相談したり転職を検討することも大切です。心身ともに疲弊する前に、早めに決断することが重要です。
転勤に関する各機関の調査
転勤に関する各機関の調査では、受け入れ期間や内示時の離職意向、転勤が退職のきっかけとなるかどうか、赴任手当の支給状況などが明らかになっています。
転勤に関する各機関の調査は、以下のとおり。
※執筆時点で収集した情報です。最新情報を確認したい場合は、各機関の公式サイトをご覧ください。
- パーソル総合研究所「転勤に関する定量調査」
・転勤を受け入れる期間は?→3年を超えると受諾意向が大幅に低下。
1年未満:56.1%
1年以上3年未満:51.7%
3年以上5年未満:35.7%
5年以上10年未満:26.5%
10年以上:25.4%
・転勤がある企業で、転勤の内示が出た際の離職意向は?→「どのような条件でも転勤は受け入れない」と答えた人が2割弱。
・不本意な転勤による離職意向は?→「不本意な転勤を受け入れるくらいなら会社を辞める」と答えた人が4割弱。
- 求人サイト エンゲージ「転勤に関する調査レポート」
・転勤が退職のきっかけになると答えた人が69%(若い世代ほど転勤に対する抵抗感が強い傾向)
・実際に転勤の辞令を受けた人のうち、31%が転勤を理由に退職
- エン転職「転勤に関する意識調査」
・転勤が退職のきっかけになると答えた人は64%
・転勤の辞令が出た場合に「承諾する」と答えた人は52%
- アート引越センター「転勤実態アンケート2023 ※総務・人事担当者への調査
・転勤をきっかけに退職した社員がいると答えた担当者は56.8%
・人事異動の頻度は「年2回」が最も多く、次いで「年1回」
・転勤者への赴任手当
単身世帯に支給していると答えた企業は71.4%で、平均支給額は約9.3万円
家族世帯に支給していると答えた企業は67.7%で、平均支給額は約13.1万円
単身赴任が限界と感じたときの対処法
単身赴任は、家族と離れて暮らす寂しさや慣れない環境での生活からくるストレスなど、さまざまな負担を伴います。このような状況が長く続くと、心身に不調をきたし、単身赴任を続けることが困難になる場合もあります。
ここでは、単身赴任が限界と感じた際に、どのような対処法があるのか見ていきましょう。
上司に相談する
単身赴任が限界と感じている場合は、まずは上司に相談してみましょう。
上司に相談する際は、以下の点に注意することが大切です。
- 率直に気持ちを伝える(限界を感じているという気持ちを正直に伝える)
- 具体的な問題点を明確にする(何が問題でどのように解決したいのかを説明する)
- 感情的に訴えることを避ける(冷静に建設的な話し合いを心がける)
- 記録を残しておく(言った言わないを防ぐために記録に残す)
単身赴任中の社員のメンタルヘルスの悪化やモチベーションの低下は、企業にとっても損失です。
そのため、多くの会社では単身赴任中の社員に対するサポート体制を整えています。相談の際には、会社の制度やサポート体制についても確認してみるとよいでしょう。
異動願を提出する
異動願を提出するのも一つの手段です。
異動願を出す際には、以下のポイントに注意しましょう。
- 会社の異動制度を確認する:(会社によって異動願の提出時期や方法が異なる)
- 異動理由を明確にする(単身赴任の状況や問題点などを説明して必要性を訴える)
- 希望する異動先を具体的に示す(希望する勤務地や部署を具体的に伝える)
- 前向きな姿勢を示す(異動後も会社に貢献する意欲をしっかりと示す)
ただし、異動願が必ずしも承認されるわけではありません。会社の状況や人員配置の都合によっては、希望が叶わないことも考慮しておくことが大切です。
転勤のない企業への転職を考える
転職を検討するのも一つの選択肢です。
転職活動を行う際には、転職サイトやエージェントを利用し、転勤がない職場を条件に求人を探してみましょう。転勤のない会社には、次のような特徴があります。
- 支社や事業所がない
- 本社勤務が必須の職種を持つ
- エリア限定社員を募集している
- リモートワークを導入している
転職活動は、時間や労力を要する大きな決断ですが、単身赴任のストレスから解放され、家族との時間を取り戻せる大きなメリットもあります。
転職活動は、自分自身のキャリアプランを見つめ直す良い機会でもあります。自分にとって本当に大切なものや、理想の働き方について改めて考えてみましょう。
まとめ
単身赴任は、孤独感やストレスを伴うことが多く、限界を感じることもあります。
もし今、単身赴任の限界を感じているなら、一人で抱え込まず、さまざまな選択肢を検討してみましょう。
上司に相談する、異動願を提出する、転職するなどの方法があります。
また、家族とも話し合い、今後の人生についてしっかり考えることも重要です。
単身赴任の限界は人それぞれですので、仕事と家庭のバランス、健康状態、精神的な安定などを考慮し、自分にとって最良の選択をすることが大切です。
■子育てやメンタルケアに役立つ情報サイト・相談窓口
・子育て・教育の相談…政府広報オンライン「子育て・教育」
・子ども支援制度…こども家庭庁「よくわかる 子ども・子育て支援新制度」
・子育て・心のケアの相談…Save the Children「おやこのミカタ」
・働く人のメンタルヘルス…厚生労働省「こころの耳」
・職場トラブルの相談…厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
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