「単身赴任中にできる税金対策は?」「サラリーマンにおすすめの節税方法は?」と疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
単身赴任は、二重生活により経済的な負担が大きく、家計への影響も深刻です。
しかし、適切な税金対策を行うことで、負担を軽減できる可能性があります。
この記事では、単身赴任者が知っておきたい税金対策「特定支出控除」を中心に、さまざまな節税方法を紹介します。
自分の状況に合った税金対策を取り入れ、単身赴任による家計負担を少しでも減らしましょう!
単身赴任者が押さえておきたい税金対策「特定支出控除」
単身赴任者が知っておきたい税金対策の一つに「特定支出控除」があります。
この制度は、会社員(給与所得者)が支払った特定支出に該当する費用の合計が給与所得控除額の1/2を超えた場合に、超過分を所得額から差し引ける仕組みです。
■特定支出控除額の計算式
- 特定支出の合計額−(給与所得控除額×1/2)
特定支出として認められる範囲は、以下のとおりです。
■特定支出の範囲
- 通勤費
- 職務上の旅費
- 転居費
- 研修費
- 資格取得費
- 帰宅旅費
- 勤務必要経費(図書費、衣服費、交際費など)
単身赴任者に特に関係が深いのは「転居費」と「帰宅旅費」です。
転居費は転勤に伴う引っ越し費用、帰宅旅費は赴任先と自宅を往復する際の費用が該当します。※一部例外あり
給与所得控除額は収入額に応じて変動します。
■給与所得控除額
給与所得の源泉徴収票の支払金額 | 給与所得控除額 |
162万5,000円まで | 55万円 |
162万5,001円〜180万円まで | 収入金額×40%−10万円 |
180万1円〜360万円まで | 収入金額×30%+8万円 |
360万1円〜660万円まで | 収入金額×20%+44万円 |
660万1円〜850万円まで | 収入金額×10%+110万円 |
850万1円以上 | 195万円(上限) |
特定支出控除額の計算例は、次のとおりです。
■特定支出控除額の例
<ケース1>
年収300万円で特定支出が転居費30万円、帰宅旅費15万円、資格取得費10万円、研修費5万円の場合
【給与所得控除額】
300万円×30%+8万円=98万円
【特定支出控除額】
60万円−(98万円×1/2)=11万円
<ケース2>
年収400万円で特定支出が転居費40万円、帰宅旅費20万円、資格取得費10万円、研修費20万円の場合
【給与所得控除額】
400万円×20%+44万円=124万円
【特定支出控除額】
90万円−(124万円×1/2)=28万円
※上記はあくまで目安となります。参考としてお考えください。
このように、特定支出控除を利用することで、税負担を軽減できる可能性があります。
なお、特定支出控除を利用するには確定申告が必要になります。
リクルートが運営する保険チャンネルでは、所得控除や確定申告を活用して、税金の負担を最小限に抑えるためのアドバイスを無料で行っています。
参照:国税庁「給与所得者の特定支出控除」
国税庁「給与所得控除」
単身赴任サラリーマンが活用できる節税方法
単身赴任中のサラリーマンが利用できる税金対策には、特定支出控除のほか、医療費控除、住宅ローン控除、生命保険料控除、NISAなどが挙げられます。
自分や家族に該当するものがあれば、積極的に活用しましょう。
扶養控除
扶養控除とは、対象となる扶養親族がいる場合に所得控除を受けられる制度です。
控除の対象となる方の条件として、配偶者以外の親族で16歳以上(控除を受ける年の12月31日時点)、年間の合計所得金額が48万円以下(給与収入の場合、年収103万円以下)などがあります。
控除額は以下のとおりです。
区分 | 控除額 |
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 |
特定扶養親族 | 63万円 |
老人扶養親族(同居老親等以外の者) | 48万円 |
老人扶養親族(同居老親等) | 58万円 |
参照:国税庁「扶養控除」
医療費控除
医療費控除とは、本人や配偶者、親族のために1年間で支払った医療費が一定金額を超えた場合に適用される所得控除です。
控除額は、以下の計算式で算出されます。
■控除額の計算
・年間で支払った医療費の合計額−保険金などで補填される金額−10万円(※)
※総所得額が200万円未満の場合は「総所得額の5%」
医療費控除の上限額は200万円です。
また、医療費控除の対象となる費用には、次のようなものがあります。
- 病院での診療費
- 入院費
- 通院にかかる交通費
- 医師の送迎費
- 妊婦の検査や定期検診の費用
- 治療のためのマッサージ費用
- 医療用器具の購入費用 など
詳しく知りたい方は、「医療費を支払ったとき|国税庁」をご参照ください。
医療費控除を受けるためには、医療費控除の明細書を作成し、確定申告を行う必要があります。
参照:国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
セルフメディケーション税制とは、一般用医薬品(OTC医薬品)の購入費用が一定額を超えた場合に控除を受けられる制度です。
具体的には、年間のOTC医薬品購入費用が1万2,000円以上で、さらに人間ドックやメタボ検診、予防接種など、健康増進や病気予防に取り組んでいることが条件となります。
控除額は、以下の計算式で算出されます。
■控除額の計算
・年間の一般用医薬品等(OTC医薬品)購入費用−1万2,000円
控除額の上限は8万8,000円です。
なお、セルフメディケーション税制と医療費控除との併用ができません。
参照:厚生労働省「セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について」
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、「住宅ローン減税」とも呼ばれる制度で、年末時点のローン残高の0.7%が最大13年間、所得税から控除される仕組みです。
所得税で控除しきれなかった分は、住民税から差し引かれます。
住宅ローン控除の適用を受けるには、住宅ローンの返済期間が10年以上であること、床面積が50㎡以上でその半分以上が自分の居住用であることなど、一定の条件を満たす必要があります。
また、住宅の種類や環境性能に応じて、控除対象となる借入限度額が異なる点にも注意が必要です。
■新築住宅/買取再販住宅
環境性能 | 借入限度額 |
長期優良住宅 低炭素住宅 ※控除期間最大13年間 | 【令和6年入居】 子育て・若者夫婦世帯5,000万円 その他の世帯4,500万円 【令和7年入居】 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 ※控除期間最大13年間 | 【令和6年入居】 子育て・若者夫婦世帯4,500万円 その他の世帯3,500万円 【令和7年入居】 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 ※控除期間最大13年間 | 【令和6年入居】 子育て・若者夫婦世帯4,000万円 その他の世帯3,000万円 【令和7年入居】 3,000万円 |
その他の住宅 ※控除期間なし | 0円 |
■既存住宅
環境性能 | 借入限度額 |
長期優良住宅 低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 ※控除期間最大10年間 | 【令和6年・7年入居】 3,000万円 |
その他の住宅 | 【令和6年・7年入居】 2,000万円 |
住宅ローン控除を受ける際は、初年度に限り確定申告が必要です。
2年目以降は、勤務先での年末調整によって手続きが行われるため、確定申告の手間はありません。
参照:国土交通省「住宅ローン減税」
生命保険料控除
生命保険料控除は、年間で支払った保険料のうち一定金額が所得から控除され、所得税や住民税を軽減できる制度です。
対象となるのは、生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料で、最大控除額は12万円です。
年間の支払保険料に応じた控除額は、以下のとおりです。
※新契約(平成24年1月1日以後に契約締結)の場合
年間の支払保険料等 | 控除額 |
2万円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万円超4万円以下 | 支払保険料等×1/2+1万円 |
4万円超8万円以下 | 支払保険料等×1/4+2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
生命保険でも、保険期間が5年未満の場合は控除の対象外となることがあります。
参照:国税庁「生命保険料控除」
地震保険料控除
地震保険料は所得控除の一つで、年間の支払保険料に応じて控除を受けられ、税負担の軽減につながります。
■所得税
年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
5万円以下 | 支払保険料の全額 |
5万円超 | 一律5万円 |
■住民税
年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
5万円以下 | 支払保険料×1/2 |
5万円超 | 一律2万5,000円 |
地震保険を支払っている場合は、どれくらい控除が受けられるか確認してみましょう。
参照:国税庁「地震保険料控除」
ふるさと納税(寄附金控除)
ふるさと納税は、自分が応援したい自治体に寄付できる制度です。
ふるさと納税には、次のようなメリットがあります。
- 寄付金の使い道を指定できる
- 寄付先の自治体から返礼品が受け取れる
- 所得税や住民税の控除が受けられる
寄付金は、教育、子育て、復興支援など使い道を指定することが可能です。
また、寄付先の自治体からは、寄付金額の3割以内で地元の特産品や工芸品などの返礼品がもらえます。
税金の控除は、寄付金のうち2,000円を超える部分が対象となります。
例えば、5万円を寄付した場合、4万8,000円が控除の対象です。
ふるさと納税は厳密には節税ではありませんが、実質自己負担2,000円で返礼品を楽しめる魅力的な制度です。
参照:国税庁「ふるさと納税(寄附金控除)」
NISA(少額投資非課税制度)
NISAは、節税しながら資産形成ができる制度です。
2014年にNISA制度が開始され、2024年からは内容がさらに拡充された「新NISA」がスタートしています。
18歳以上であれば新NISA口座を開設でき、「つみたて投資枠」では年間120万円、「成長投資枠」では年間240万円まで投資が可能です。
通常、株式投資や投資信託の利益には、20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税金が課せられます。
しかし、新NISAでは運用で得た利益が非課税となるため、税金がかかりません。
そのため、より効率的な資産運用が可能になります。
参照:金融庁「NISAを知る」
国税庁「株式・配当・利子と税」
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)は、節税しながら老後の資産を形成できる私的年金制度の一つです。
自分で拠出した掛金を、投資信託や定期預金、保険商品など、自分で選んだ運用商品で運用します。
運用資産は、60歳以降に引き出すことが可能です。
iDeCoの特徴は、掛金や運用益に税制上の優遇措置が適用されることです。
- 掛金が全額所得控除の対象
- 運用益が非課税
- 受け取る際にも控除が適用
掛金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となるため、所得税や住民税が軽減されます。
また、iDeCoの運用益は非課税となるため、税金がかかりません。
iDeCoでは受け取り方を年金か一時金で選ぶことができ、年金の場合は公的年金等控除、一時金の場合は退職所得控除の対象になります。
参照:厚生労働省「iDeCoの概要」
iDeCo公式サイト|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
単身赴任者の税金対策で注意すべきポイント
単身赴任者が税金対策を行う際には、事前に注意点を理解しておくことが大切です。
ここでは、特に気をつけたい2つの注意点を紹介します。
確定申告が必要な場合がある
節税方法によっては、確定申告が必要になるため注意が必要です。
確定申告の期間は、通常2月16日〜3月15日までとなっています。
例えば、医療費控除を受ける際は、医療費控除の明細書を作成し、確定申告書と一緒に提出する必要があります。
住宅ローン控除の場合、2年目以降は勤務先の年末調整で手続きが行われますが、初年度は確定申告が必要です。
確定申告が必要な場合は、早めに書類を準備しておくことが大切です。
■確定申告の関連サイト
確定申告が必要か不安な方や、手続きの進め方がわからない方は、早めに税務署や専門家に相談しましょう。
リクルートが運営する保険チャンネルでは、所得控除や確定申告を活用して、税金の負担を最小限に抑えるためのアドバイスを無料で行っています。
節税を意識しすぎて無駄な支出を増やさない
税金対策に気を取られすぎて、かえって無駄な支出を増やしてしまうケースも少なくありません。
節税の基本は、無駄な支出を避けつつ、控除などを上手に活用して合法的に納税額を減らすことにあります。
しかし、税金対策を理由に高額な商品を購入したり、不要なサービスに加入したりすると、結果的に損をしてしまう可能性があるため注意しましょう。
税金やお金に関する相談先
税金やお金に関する悩みを解決したい場合は、専門家に相談するのが一番です。
ここでは、「税務署」「税理士事務所」「ファイナンシャルプランナー(FP)」の3つの相談先について紹介します。
自分にあった相談先を見つけて、早速悩みを相談してみましょう。
税務署
税金や確定申告に関する相談先として、税務署を利用することができます。
「どんな税金が発生するのか」や「確定申告が必要か」といった質問に対して、回答を得ることが可能です。
しかも、無料で相談できます。
ただし、税金対策のこまかい内容や複雑な相談には対応が難しい場合があり、対応時間にも制限があるため注意が必要です。
税理士事務所
税金のプロフェッショナルに相談したい場合は、税理士事務所や税理士法人を利用する方法があります。
税金対策のこまかい内容や複雑な問題についても相談可能です。
ただし、相談には費用がかかるのが一般的で、料金の目安は30分で約5,000円、60分で約1万円です。
また、「法人税」や「相続税」など、税理士ごとに得意分野が異なる場合があるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
費用を抑えたい場合は、日本税理士会連合会の相談会や日本税務研究センターの税務相談室を利用する方法もあります。
ファイナンシャルプランナー(FP)
お金に関する相談先として、ファイナンシャルプランナー(FP)があります。
FPには、家計管理、老後資金、住宅ローン、保険選び、税金、教育資金など、お金に関するさまざまな悩みを相談できます。
ライフプランにあわせた資金シミュレーションや、所得控除や確定申告を活用した税金負担の軽減に関するアドバイスを受けられるのが特徴です。
無料でFPに相談したい方には、リクルートが運営する保険チャンネルがおすすめです。
リクルートが運営する保険チャンネルでは、所得控除や確定申告を活用して、税金の負担を最小限に抑えるためのアドバイスを無料で行っています。
まとめ
適切な税金対策を実施することで、家計の負担を減らし、赤字リスクを抑えることができます。
単身赴任中でも実践できる節税方法は多数あるので、該当するものは早めに取り入れることをおすすめします。
早めに取り組むことで、より大きな節税効果が期待できます。
ぜひ、家計の負担軽減にお役立てください!
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